まずは広辞苑や辞典を参照し考えていきます。広辞苑で「張る」の項目を索引すると「いっぱいに押し広がる意。」「事物を力いっぱい押し広げる。」とあります。
力を加え何かを広げのばす、ぴんと一面に覆う時に「張る」という漢字を用いると考えられます。
※出典:「張る」.新村出編.『広辞苑』第7版.岩波書店.2018,p.2401
一方、「貼る」を広辞苑で引くと「張る」を参照するよう指示があり、貼るという言葉単独での掲載はありませんでした。「張る」の項目を読み進めると、上記で記した「いっぱいに押し広がる意。」「事物を力いっぱい押し広げる。」のほかに、「(「貼る」とも書く)ひらたくのばして、糊・釘などで他の物につける。」とあります。
※出典:「張る」.新村出編.『広辞苑』第7版.岩波書店.2018,p.2401
糊や釘などを用い、のばしたものを他の物につける場合に「貼る」という漢字を用いることが考えられます。また『常用漢字コアイメージ辞典』で「張」と「貼」の漢字を参照すると、それぞれの漢字に下記のイメージが含まれていることが分かります。
張 ぴんとはり渡すことを古代漢語で(一部略)「張」と表記する。「張」は弓の弦を長く伸ばしてはり渡す様子を暗示させる。
意味 「長く伸びる」というイメージは「大きく広がる、開く、展開する」というイメージにもなる。
※出典:「張」.加納善光著.『常用漢字コアイメージ辞典』.中央公論新社.2011,p.767
貼 「占」は「一つの所に定着する」というイメージがあり、「くっつく」というイメージに展開する。
意味 六朝時代に質のかた(抵当)の意味でつかわれているのが最初。後に平面に薄くはりつける意味になった。
※出典:「貼」.加納善光著.『常用漢字コアイメージ辞典』.中央公論新社.2011,p.772
実際オフィスの内装工事の現場では、壁紙の施工について「張る」と「貼る」の漢字が両方使用されています。しかし言葉の意味から検討すると、壁紙も糊で貼り付けており、またはりつけたときの薄さに着目するのであれば、『広辞苑』と『常用漢字コアイメージ辞典』を参考に「新規クロス貼り」「新規壁紙貼り」という表現がふさわしいと考えます。
では、床材の「タイルカーペット」や最近流行の「塩ビタイル」も床材用のボンド・糊で施工するため「貼る」という漢字がふさわしいのでしょうか。実際、オフィスの内装工事の弦まではカーペットなど床材でも「張る」という漢字が用いられているケースもあります。
「張る」と「貼る」が両方つかわれている理由について、
1.内装材の施工方法の変遷
2.日本の木造建築の構法
3.「貼」常用漢字の登録
という3点から、床材に使用する「貼る」と「張る」の違いについて検討してみます。